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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第32章 "宋"
毎夜毎夜雷は鳴り響く…
京の人々は昔の祟りと怖がり、夜外に出る者は居ない。
雷が落ちるようになってもう半月近い、幸いまだ大きな事件や火災は起きては居ないが、雷に打たれて亡くなったり、大木が真っ二つになったり、京の外れの家に落ちたりと、何時自分に降り掛かるかと戦々恐々としている。
瑠衣や当代様達も必死に宋永輪の居場所を探しているが、なかなか見つからない…
余程強固な結界で隠しているのか、まだ捜索していない場所か…苛々は募るばかり。
瑠衣は文机に向かい、京の外れの地図とにらめっこ…
筆を持ち、昨日捜索した場所にバツ記しを付け……
「はぁ―――――――っ」
この半月で地図はバツ記しで埋め尽くされ、開いている部分は残り少ない。
(池田屋事件まで後半月足らず…間に合うのか?)
まだ捜索していない僅かの場所を睨み、今日の場所を絞っていく…。
「…今日も文机にかじりついていますね……」
お茶を二つ持ち総司は部屋に入り、一つを瑠衣のいる文机の上に置く。
「ありがとう御座います」
うっすら笑いお茶に手を出す瑠衣、幾ら地図を睨んでいても埒があかない。
「しかし…
見事に真っ黒になりましたねー」
文机の上の地図を見て、総司も一言零す。
「ですよね…
もう書く所ありませんよ…」
肩をすくめ、お茶を啜る瑠衣…
此だけ探して見つからないとは情けない。
(確か‥池田屋事件は六月五日…
枡屋の情報が入るのは前の日の深夜、今は五月の中を越えて末に向かってる最中…)
歴史と歪みの葛藤…
早く見つけなければならないのに、何もたもたしているんだ自分は。
「煮詰まっているようで」
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