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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第32章 "宋"


「煮詰まりもしますよ…
場所の方向と捜索範囲は分かっているのに、全くそれらしい物すら無いんですから」

「んーどうですか?
また、こういう時の土方さん頼み」

にっこり笑いながら、総司は瑠衣に提案。

確かに、土方の洞察力は侮れない。

掛けてみるか…
もう藁にも縋りたい今日この頃……
瑠衣は総司の言う事に従う事にした。


「副長の所に行ってみますか…」

「瑠衣の弱音も、なかなか聞けませんからねぇ」

「別に弱音じゃ無いですっ!!」

とは言っても、本当は弱音に近いものがある…
地図を丸め、土方の元に向かう為立ち上がった。







土方の部屋ー


総司と瑠衣が真面目な顔で座っている。


「で…
相談って何だ?」

橘が持って来る相談は、厄介な事は確かだろう。

瑠衣は一枚の地図を取り出し土方に見せた。


「・・・なんだこりゃ?」

言いたい気持ちは分かる、それくらい墨で真っ黒な地図。


「はぁ…
前にお話した、宋永輪を捜索している地図なんですが‥見つからないんですよ…
その地図上の何処かに居るのは確かなんですが…」

…て事はこの記しは捜索した場所か…
何時の間にこんな事をしているのやら。

土方は地図を手に取り、真剣に見始め…


「半月近く探してこの有り様ですからね…
情けないですよ」

「全くだな…」

流石の瑠衣も沈み気味で土方を見ている。


「・・・・・待てよ…」

土方は文机の上の書類を漁り、一枚の地図を引っ張り出した。

それと瑠衣が持って来た地図を比較して見る。

暫く真剣に二枚の地図を睨む土方…
そしてある場所に気付く。


「…橘……」

「はい…」

二枚の地図を瑠衣の前に置き、土方の説明が始まる。


「一枚は橘お前が持って来た物、もう一枚は最近雷が落ちた場所に記しを付けた物だ」

どちらも墨で真っ黒で、地図の欠片も感じない。


「だがな、この二枚を見ると、一ヶ所だけ不自然な場所がある…」

土方は二枚の地図の同じ場所を指差し、瑠衣を見た。

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