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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第33章 "乱"
暫く泣き続けた瑠衣だったが、当代様との約束の刻限まてあと少し…
瑠衣は両手を前に出し、姿替えを全て解いた…
朱桜刀も金色の太刀に戻っている。
そして、約束の場所へと転移した。
屯所裏蔵の上ー
転移して出た時には、当代様は既に来ていた。
「…遅くなってしまった……」
「いや…
我も今来た所、あの話で良いのだな…」
「問題ない…
それで十分じゃ…」
試衛館の人達、山崎、島田、斎藤、この者達には記憶の封印を、他の隊士達は記憶の抹消を…
後、橘瑠衣が居た証拠になる書類の改ざん。
「沖田はどうした?」
「既に記憶は封印してある」
「そうか…
ではやるか……」
「・・・・・」
二人の朱雀から赤い光が輝き出す、それは霧になり屯所中に充満していく……
幸い、昨日今日なので新撰組全員が屯所の中に居る。
霧は隙間無く入り込み、人々の記憶を消していく…
そして、その赤い霧は京全体に及んでいく、赤い月と赤い霧。
事の成り行きを黙って見る二人の朱雀。
一刻程経ち霧は晴れた。
「そなたとは、また会う事もあろうな…」
「そうかも知れぬ…
だが、次は我の立場も変わろうて…」
「だろうな…
全て一からだ」
「分かっておる…
では当代様……」
「あぁ…」
瑠衣‥いや、朱雀は桜の木の前に降り立つ。
「やはりそなたで始まり、そなたで終わるか…」
チラリと総司の部屋を見、思いを振り切るように後ろを向く。
そして片手を前に‥桜の木に向かって出した。
"パチ…パチ…"
時の時空が開く…
(・・・
さらばだ新撰組)
片方の朱雀は、そのまま時空に入り込み消えていく…
当代様もそれを見届け、外宮へと姿を消した・・・
何も無かったように、静かな新撰組屯所…
一年弱居た、橘瑠衣という存在は、もうどこにも無い。
此から正常に歴史は動いていくのだろう…
それを管理されているとは知らずに……
ただ、普通に戻っただけ…
何一つ変わっては無い‥筈。
これからも歴史・・時間は動いていく、勿論新撰組も・・・
第一部了ー