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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第8章 "常"
夕暮れー
あの後裏道を通り早々に屯所に戻って自室でまた書物を詠み耽っていた瑠衣…
赤々とした日差しが入り夕方だと気づく。
(もうそんな時間かぁ…)
何かに集中すると時が早く感じるのは今も昔も変わらない…
書物を閉じ、ゆっくり立ち上がり障子を開ける
そこには見事な夕焼け空があった。
(自分の時代では考えられないな…)
高層ビル、車の排気、空を飛び交う飛行機…
そんな物が一切無く、空気は澄み切っている。
(綺麗・・・・)
瑠衣は暫く夕焼け空に見入っていた。
「あれっ橘さん?
どうかしたのですかぁ??」
縁側にいた(と言っても自室の前だが…)瑠衣に総司は声を掛ける…
その声に空を見ていた瑠衣が総司の方へ振り返った。
「お帰りなさい、沖田先生」
「はい、ただいまです
橘さん、お土産ありますよぉー」
ニコニコと瑠衣の側に座る総司…
懐に手を入れ紙包みを一つ瑠衣に向けて差し出した。
「お土産です」
「ありがとう御座います」
包みを受け取り、開けて見ると中には金平糖が入っていた。
「金平糖…ですか」
一粒摘み口に放り込む…
程よい甘い砂糖の味が口の中に広がる。
「美味しいですね‥」
「でしょう、それに形も星に似ていて綺麗ですし」
「そういう例えは良く聞きますね」
袋から金平糖を取り出しまた一粒口に入れる。
「お茶が欲しくなります
沖田先生、お茶にしませんか?」
「良いですねぇ」
ちょっと待ってて下さいと言い残し瑠衣は炊事場に走る…
この時間なら夕餉の支度をしているので簡単にお茶が淹れられるからだ。
井上にお茶を淹れて貰い盆の上にお茶を二つ持ちながら廊下を歩き出す。
(のんびりなのか忙しいのか分からない一日だったな…)
昼間の事は臆病にも出さずにこやかに総司の元に戻り、自分は金平糖を総司は大福(しっかり確保していた)を食べながら二人仲良く夕焼け空を見上げていた。
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