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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第9章 "急"
ある日の夕方ー
夕餉も済み夜の巡察の準備の最中、そこにドタバタと物凄い足音を立てて総司が自室に入って来た。
「大変ですよ橘さん!!」
かなり興奮気味の総司を見て不思議に思う。
「何かありましたか沖田先生??」
一応冷静を装い総司に聞き返してみる。
「朱雀様がいらっしゃるんですよぉ!!」
「朱雀様!?」
何しに来るんだとは流石に言えない……
「朱雀様と言えば最強の剣の達人、一目見たいじゃないですかぁ!!」
目を輝かせ期待を込めている総司。
(そりゃあ朱雀様だからね)
当たり前の話にどう答えようかと思案顔の瑠衣…
しかし瑠衣の話など全く聞いてない総司である。
「やはり、とんでもなく強いんでしょうねぇー
私、手合わせしてみたいです!!
あぁ出来たら最高ですねぇー」
何時より口数が多い‥そう思う…
「出来れば良いですね」
にっこり笑い総司の話に適当に相打ちしている。
「近藤さんの話では、なんでも変装しておいでになるような事言ってました…
どんな姿なのでしょうかね…
私、実物さえ見た事無いのですよ、あぁ…橘さんはあるのですよね?」
「えっ??
あ…はい、朱雀様とは子供の時分から面識があります」
あながち嘘ではないし土方に話したのを総司も聞いたのだろう…
本当に子供時代先代様とは会っている…
ただしまだ先の話だが…。
「どんな方なのですか?」
困った…と瑠衣は思う…
子供時代に会った先代様と今の先代様ではあまりにも性格が違い過ぎる…
もっと思慮深く、穏やかな人物だった筈だ…。
「とても良い方ですよ」
とりあえず当たり障り無く言ってみる‥が…
「それで、それで…?」
やはりコレだけでは誤魔化されないか……
「…瞳は赤色、髪が銀色の長髪、背が高くて、この世のものとは思えない美貌…
様々な術式を使い、あらゆる武芸をこなし、頭の回転は有り得ない程…
流石一族の長です」
因みに今言ったのは自分に対する人間の一般論である…
はっきり言って耳にタコが出来るだけ聞いている話…
朱雀としての本質は同じであるので、さらっと言ってやる。
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