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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
「勿論。朱羽もね。必ず、助けに行くから待っててね!」
「早く、来いよ。……待っているから」
それでも泣きそうな声で。
「今度はあたしが、急いで追いかけるから!」
朱羽がカバを追いかけて、急いで大人になろうとしたことを思い出す。
それくらいの覚悟で、カバは追ってくるのか。
朱羽は優しげに笑った。
カバの位置からは、朱羽の目から伝い落ちた一筋の涙はわからないだろう。俺はそれを隠すように朱羽の首に腕を回し、背を向け手を上げた。
「じゃ、あと頼むわ!」
一番緊張感のねぇのは俺か。
いやいや。
「「「ありがとうございました」」」
この偽物従業員三人組もだろう。
こいつらは当主が暴れ出したり、話が悪しき方に流れていた時、空気を変えるためにと用意をしていた。本物にばれる前にとんずら決め込めばいいのに、どうしても朱羽になにか言いたかったんだろう。
エールを込めたのか、力強いものだった。
結城がこっそり親指を上げると、朱羽も微笑みながら親指を上げて通り過ぎた。
……やって来い、カバ。
お前が、朱羽の呪縛を解くんだ。
数日は寝泊まりする場所が違うだけで、俺達は断絶しているわけじゃねぇよ。カバの怪我が癒えるまでの話。監視役がお前の味方についたら……すぐ本家に来れるんだ。
逆境をものにするお前の底力で、駄目なものは駄目だとはっきりいえるお前の強さと、その澄んだ目で……穢れきったジジイとババアをKOしてやれ。
だから、カバ。
今は朱羽に会えない力をバネに、英気を養え。
最終決戦は、俺と朱羽がいる本家。
ラスボス・裏ボスを倒しに来い。
……この状況を、俺は見越していなかったわけではない。
万が一のために、だからあいつは動いてくれていたんだ。
あいつもまた、本家で俺達の力になる。
そんなあいつを、名取川家に"第三者"として送り出す。
だから俺の代わりに……頼むぞ沙紀――。