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いじっぱりなシークレットムーン
第12章 Fighting Moon
「真下さんが家を大事にするように、俺達も家を大事にしたい。家を守りたい。今、その家が危機にあり、皆で力を合わせて守っていたところでした。その上に、俺が次期当主になったら、いらないものと祖父に潰されるかもしれない状況にあります」
朱羽はまっすぐに真下当主を見て、頭を下げた。
「俺達子供が、やりがいがあると思えた場所で、守りたいと思える場所で、どうか働くことをお許し下さい。衣里さんを……俺のように、家族の都合で"使わないで"下さい。衣里さんの心をどうか尊重して下さい。もっと話し合って下さい。俺と同じ轍(てつ)を踏ませないで下さい」
「もういいよ、香月。ほら、時間……」
衣里が朱羽の顔を上げさせた。
「私は大丈夫。私が、あんたに代わって陽菜を守ってあげる。だからあんたは私のことなど考えずに、陽菜の元に、シークレットムーンに戻ってくることだけを考えな。ほら、遅刻したら話がやばくなる」
「はい。……決着をつけたら、真下家にご挨拶に伺います。では今は……失礼します」
朱羽も、衣里を真下家に戻す気はないのだろう。
宣戦布告していく余裕があるのか、お前。
「行きましょう、渉さん」
おいおい、カバに背中向けるなって。
「カバは……」
「俺は大丈夫です。これを、借りましたから」
朱羽の手の中にあったのは、女もののネックレス。
三日月の形をした中に、ダイヤが入っている。
「必ずこれを、陽菜に戻します。そしてその時は、これだけではなく……」
朱羽はそこで切って笑った。
「俺はお姫様なんですって。だから俺は、閉じ込められた塔の中で、王子様が来るのを待ちます。まあ、ただ待っているだけではないけですけど」
強がりやがって。
唇が震えているぞ、お前も笑っているカバも。
「ほら、カバになにか声をかけてやれ!」
朱羽は少し考えて言った。
「浮気、するなよ」
俺はよろけた。
緊張感がねぇ……。