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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
  

「ひとがひとを好きになるのに、理屈が必要ですかっ!? 相応しい相応しくないなんて、誰がどんな権利があって決めるものですかっ!!」


 あたしの目から涙が零れる。


「誰に、愛するふたりを切り裂く権利がありますか!!」


 彼女は、あたしのために、心の傷を曝け出したんだ。


「あなたは、あの時苦しまなかったんですか!? 朱羽さんの気持ちが、まるでわからないんですか!?」


 きっと誰にも触れて欲しくなかっただろう。誰にも見られたくなかっただろう。政界にも顔がきく彼女の弱点、彼女の人間らしさ。


「ご当主……」


 もう見ていられなかった。

 彼女が、あたしにしてくれたそれを、あたしはただ黙って聞いているわけにはいかなかった。


「ご当主。私は……妹の前で実の父親に犯されました」

「そんなこと言わなくてもいいのよ!!」

 悲鳴のような彼女の声をあたしは退けた。

「目の前で、妹と妹と関係していたあたしの恋人が事故で死にました。あたしは辛くて閉じこもり、そして母は……父と無理心中。それすら記憶に残らないほど、あたしの精神は病んでいました」


 心を伝えるには、真実しかない。

 どんなに取り繕っても、真実には無効だ。
 
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