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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「それを今あたしが勤めるシークレットムーン、そうです、宮坂専務が忍月コーポレーション傘下に引き上げてくれたその会社の、今は会長になった元社長……月代が助けてくれました。
ただあたしは精神科医から催眠療法を受け、事実を知らずに過ごしてきました。しかし満月の夜だけ、あたしは……狂いました」
言いたくない、朱羽のおじいさんにこんなこと。
だけど――。
「セックス中毒のようになっていました。満月限定で、原因不明の特殊な病気だとずっと思っていました」
なにも声がしない。
呆れているのか、怒っているのか。
「朱羽さんを好きになるにつれ、あたしはその満月が苦しくてたまらなかった。だけど……朱羽さんは、あたしのすべての告白を許してくれました。そしてこう言いました。逃げるのではなく、戦えと。そしてあたしは、十年も封じられていた記憶と真向かい、満月の夜に起こった……家族を喪った時のことを思い出しました」
声が震える。
泣いちゃ駄目だ。
「朱羽さんがいなければ、あたしは満月を病気としてずっと逃げ回っていたでしょう。苦しい事実を知らずにいれば、年十二回の苦しみですむ。だけど朱羽さんは、その苦しみも克服しろと、背中を押してくれて……満月を克服出来ました。朱羽さんはどんなあたしでも裏切らないと思った瞬間、精神の呪縛から、そして精神科医の催眠からも、自力で抜け出ることができました」
あたしの身体が震える。
「ご当主は、たかが恋愛と思うかも知れません。人生での血迷い事だと。時期さえ過ぎれば落ち着くものと。……だけど、あたしにとっては違うんです。男として好きという以上に、あたしがあたしであるために、朱羽さんが必要なんです。初めてあたしは……男性を好きになれた。それまでは満月のことで、あたしは穢れていると思っていたから。恋愛する資格もないと。朱羽さんは、そんなあたしをまるごと愛してくれたんです」
止められない涙が、ぼたぼたと畳に落ちる。
「朱羽さんをあたしから奪わないで下さい。朱羽さんと肩を並べて笑い合える些細な幸せを、奪わないで下さい!」