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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
なんで千絵ちゃんがここに!?
いやそれより――。
「千絵ちゃんが監視役だったの!?」
「正解でーす。ね、ご当主」
忍月当主から否定の言葉が出てこない。
「……あ、社長! 会長にご昇進、おめでとうございます。具合、大丈夫ですかぁ?」
千絵ちゃんと最後に会ったのは、表参道か。
「皆さんもお久しぶりです」
今、とにかくにこやかに笑う彼女はなにを考えているのだろう。
朱羽の……あたし達の味方か。
それとも敵対する財閥の娘としてか。
「ご当主。ひとつよろしいですか」
傍観していた名取川文乃が言った。
「監視役というものの基準は一体なんだったのです?」
名取川家で、シークレットムーンがなぜここまで危機にあるのかと聞かれ、会社の皆は言いにくそうに、千絵ちゃんのことを口にした。
確かに千絵ちゃんが、向島のためにとうちで動いていなければ、うちは社員を失うことも、取引先の信用を失うこともなかった。
それをわかっていながらも、はっきりと千絵ちゃんが悪いと口にした者はいなかった。
やはりそれだけ、千絵ちゃんは社員に馴染んでいたんだ。
「朱羽の通う会社で、朱羽と近すぎず、距離を保てる者。そして監視役だということを悟られない者。悟らせない者。彼女はビルで、各会社に忍月と関係がある者を示唆し、さらには詮索させないための噂をたてた」
千絵ちゃんはシークレットムーンだけではなく、社外の人達とも仲がよかった。全部の会社社員が集まる食堂で、いつもご飯を食べていた。
噂の出所は、彼女だったのか。
「忍月の関係者がいると思ったら、会社の雰囲気は変わる。その中でワシの孫達がどう振る舞っているのか、そこらへんを彼女に監視させた」
「ご当主は、彼女がどんな目的でシークレットムーンに入ったのか、ご存知で?」
名取川文乃は噛みつく。