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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「あら、結城……社長。香月課長と鹿沼主任が別れたら、結城さん、主任を貰えるじゃないですか。念願の恋人になれるんですよ?」
「ひとをハイエナみたいに言うな。俺は、香月のおこぼれにあずかるために、今ここにいるんじゃねぇよ。馬鹿にするな」
結城の怒りを込めた静めた声に、千絵ちゃんは押し黙る。
「香月はな、物じゃねぇんだよ。人間なんだよ。俺からすれば、忍月もお前も香月をひととして扱ってねぇじゃねぇか。香月の気持ち、まるで考えてちゃいねぇ!」
「同感」
衣里が、腰に手を当てて冷ややかに言った。
「どうして、香月の心を優先しようとしないのかな。力づくで奪って、香月から愛されると本気で思う!?」
「千絵ちゃん……」
杏奈が気の毒そうに言う。
「千絵ちゃんが受けた傷、鹿沼ちゃんや香月ちゃんにもつけたい? そこまで嫌うのはどうして?」
「……私は」
千絵ちゃんはなにかを言いかけて、ぐっと堪えた。
「やだなあ、皆してそんなに真剣な顔で! いいですよ、私はどうせ悪者ですから。シークレットムーンを売ったし、私は恨まれるのが当然で、皆の仲間ではないですから!」
「でも千絵ちゃんは、助けようともしてくれた」
あたしは言った。
「スポ根は流行らないといいながら、スポ根で乗り切れる案を出してくれた。仲間ではないといいながら、仲間として考えてくれたんじゃないの?」
千絵ちゃんは泣き出しそうな顔をしている。
その時、笑い声が響く。
この声、またあのひとか。
「監視役を心理的に味方につけようとしている。これはお義父さま、ゆゆしき事態ではありませんか?」
「そんなつもりではっ!!」
あたしは焦った。
「これはペナルティーとして、無効にすべきです!!」
無効になるとは即ち――。
「監視役はひとりしか朱羽さんを認めなかった。よって朱羽さんは」
「お待ち下さい!!」
遮るようにそう言ったのは千絵ちゃんで、バックから手紙を取り出して当主に持って行った。
「私の結論は、あらかじめこちらに書いてあります。これが私の答えです」
千絵ちゃんは、一体なにを書いていたのか。
ゆっくりと時間をかけて出した答えとは……。