この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

「お前が俺の前で、心臓発作でぶっ倒れなかったら、俺はお前に興味を持ってここまでお前を可愛がらなかっただろう。そう思えば、心臓病もよかったのかもな」
「突き詰めれば、俺を心臓病にしてくれた母親もよかったのかもしれません」
「だったらあのババアが追い出してくれたこともよかったことか?」
朱羽は押し黙る。
「あのババアを俺も理解したいとも思わなかった。だけどジジイの観点は違う。それをわかってカバは動いているはずだ。決して自虐的な行動をしているわけではないだろう」
ガシャーン!
タイミングよく、なにかが壊れる派手な音がした。
これもきっと、カバへの嫌がらせだろう。
「おい、こら待て!」
飛出そうとする朱羽の服を掴んで俺が止めた。
「でも俺の陽菜が!」
「わかったわかった、お前のカバだな、心配だな。だけどお前、そこまでカバに構っているから、カバがいじめを受けるんだぞ? まずはその都度カバを見に行くのは、やめろ」
「でも……」
25歳になったばかりの男が涙目だ。
「ま、確かに……沙紀だったら、どんなに沙紀が強かろうと俺も飛んで行っただろうけどよ、今回は全面的にカバに任せているんだから、まずお前が落ち着け。まず深呼吸!」
25歳の男が、深呼吸をした。
「朱羽。お前が出る度にカバは、嫉妬や嫉み僻みの対象になるんだ。どうせお前、カバに言われて手を貸してないんだろう? 不自然な観察は逆効果だ」
「でも!」
「カバを信じろ! あいつの底意地は、お前への愛情から端を発しているんだぞ? お前カバの愛が信じられねぇのか!」
「でも泣いていたら……」
「社会に揉まれている28歳の女を舐めるな、朱羽。お前が手出し出来ない領域に、あえてカバが踏み込んだ。その覚悟を、お前がぶち壊すな」
「……っ」

