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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 

「お前が俺の前で、心臓発作でぶっ倒れなかったら、俺はお前に興味を持ってここまでお前を可愛がらなかっただろう。そう思えば、心臓病もよかったのかもな」

「突き詰めれば、俺を心臓病にしてくれた母親もよかったのかもしれません」

「だったらあのババアが追い出してくれたこともよかったことか?」

 朱羽は押し黙る。

「あのババアを俺も理解したいとも思わなかった。だけどジジイの観点は違う。それをわかってカバは動いているはずだ。決して自虐的な行動をしているわけではないだろう」


 ガシャーン!


 タイミングよく、なにかが壊れる派手な音がした。
 
 これもきっと、カバへの嫌がらせだろう。

「おい、こら待て!」

 飛出そうとする朱羽の服を掴んで俺が止めた。

「でも俺の陽菜が!」

「わかったわかった、お前のカバだな、心配だな。だけどお前、そこまでカバに構っているから、カバがいじめを受けるんだぞ? まずはその都度カバを見に行くのは、やめろ」

「でも……」

 25歳になったばかりの男が涙目だ。

「ま、確かに……沙紀だったら、どんなに沙紀が強かろうと俺も飛んで行っただろうけどよ、今回は全面的にカバに任せているんだから、まずお前が落ち着け。まず深呼吸!」

 25歳の男が、深呼吸をした。
  
「朱羽。お前が出る度にカバは、嫉妬や嫉み僻みの対象になるんだ。どうせお前、カバに言われて手を貸してないんだろう? 不自然な観察は逆効果だ」

「でも!」

「カバを信じろ! あいつの底意地は、お前への愛情から端を発しているんだぞ? お前カバの愛が信じられねぇのか!」

「でも泣いていたら……」

「社会に揉まれている28歳の女を舐めるな、朱羽。お前が手出し出来ない領域に、あえてカバが踏み込んだ。その覚悟を、お前がぶち壊すな」

「……っ」
 
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