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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon

――もうね、陽菜ちやん名取川家で凄かったんだから! 朱羽くん愛されてるよ~っ!!
名取川家に派遣した沙紀が戻って、肉食ババアをまた強制的に意識を落とした後、朱羽もいる俺の部屋に来た沙紀は、興奮まじりに、ジジイと対峙したカバの様子を詳しく語ってくれた。
名取川文乃とジジイが恋仲だということは俺も初めて知ったし、正直、彼女がカバと朱羽のために、傷をさらしたことは驚いた。
身分違いの恋愛。
遡ればジジイは三十代、名取川文乃は……何歳だ? 女は魔物だから、実年齢はわからねぇけど、矢島社長だって、見た目はカバの姉のような三十代に見えるほど、完璧に化けている。どう見ても、名取川文乃の方が上なのに、同級生だそうだ。
初代……俺の曾祖父は、旧家からは成り上がりの田舎者と嫌われていたのだという。確かに、財閥とはいえども、歴史は浅い。
一方名取川家は茶道として、歴史に名を馳せた名家。
しかも向こうはひとり娘、忍月財閥では次期当主でも婿に入るしかない。
そんな諸々なしがらみで、名取川文乃と添い遂げられなかったのだろうが、ジジイはその代わりに、誰もが外から口出せないほどの強固な忍月ワールドを作り上げた。
血統主義になったのは、ジジイの代からだそうだ。
忍月を大切にするあまり、忍月を愛するジジイと同じようなコピー人間を作ろうとしたのだろうと、俺は思う。そのため、死んだ親父はジジイに溺愛され、ジジイと考え方も好みも似ていた。
……アホだよな、だから同じ女に入れ込んだ。ジジイは、妻が居たというのにそちらに顧みず、ホステスの女に入れ込み、その女を正妻にした親父。家では仲良く、父子でその女を抱くとは、本当に仲良しだよな。
血統主義の忍月が嫌う"どこの馬の骨かもしれない"女が、次期当主夫人になった途端、純血の子供が出来ず、親父が使用人やらあちこちに子供を作る羽目になるとは。さらに出来た子は、忍月に居座るその正妻に狙われる始末。さらに妻と父親が、親父の延命治療を拒否していたなんて、こんなドロドロ、親父は見越して死んでいったのだろうか。ジジイも見越して、そんな忍月を作り上げていたのだろうか。

