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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「あなたがしたことは恐怖政治です。渉さんは本家に出てもいまだあなたに縛られている。その証拠に彼の恋人をあなたに近づけさせなかった。お母さんのように殺されてしまうから、と。それだけのトラウマがあったから。しかし朱羽が、あなたの手によりお母さんが死んだと知ったのは、渉さんからです。渉さんが怖がっている美幸さんがしたことだから、怖がっていただけのこと。間接的な関係だったから気づき得た。細かな矛盾点を」
朱羽の視線を感じる。
「だとすればあたしにもわかりえるはず。あなたがなぜ忍月にこだわって、タエさんとシゲさんを巻き込んでいるのか」
あたしはしばし美幸夫人と視線を交わした。
目をそらしたのは……美幸夫人だった。
「……私を理解してやろうとはな。本気にそんなことを考えたのか? 使用人になったのも、私のことを聞くためにか」
「はい。私は美幸さんがどうと言えるだけの知識もなにもない。あるのは、渉さんの私見と、あなたが朱羽と渉さんの母親を殺し、当主とその息子はそれを止めようとしなかったということ。そして渉さんに手を出したりと、手当たり次第に男を食っていたということ。今で言えば、忍月コーポレーションの副社長を次期当主に据えようとしたこと。朱羽に手を出そうとしたこと。あなたの言い分をあたしは聞いていない」
「……お前には理解出来ぬ」
「あたし自身、不可解な現象に苦しむほど、忘却の彼方にあった過去の出来事に苦しめられてきました。なんでそんなことが起こるのか、理解出来なかった。しかし、朱羽によって矛盾を指摘され、なにが起こったのかを思い出し、不可解な現象に説明がつきました。この世には、原因があって結果があると思っています。なんら理解出来ない、不思議なことはないと。理解できないほどの悪女ならば、少なくともシゲさんがあなたに追従していない」