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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
「なぜ私の名前が出ないの?」
タエさんが愉快そうに尋ねてくる。
「タエさんには、破壊衝動を感じるので、美幸さんを止めることは出来ない。乗じて自分に都合良く周囲を動かせればそれでいい。……だから副社長と組んで、あたしと朱羽の勤める会社を玩具のように利用出来るんです」
「あら、美幸が仕組んだかもよ?」
あたしは老女を見て言った。
「……いいえ。彼女はもっと違う手を使うように思います。こんな姑息な手を使わずに。もっとあたし達が抵抗できないことを考える気がします」
するとタエさんは笑い出した。
「あははは! 私は姑息だと言いたいのね」
「そういうわけでは……」
「中々に面白いじゃないの。名取川文乃が養女にするだけあるじゃない。美幸を見て目をそらさないのは、あなたが初めてじゃないかしら。それじゃなくてもこの顔、皆震え上がって、勝手に化け物扱いして怯えて、出ていった。美幸の顔を見て逃亡しただけで、呪いのできあがり。勝手にあることないこと吹聴して、何年後もの後付けだって呪いの信憑性が増す要因」
タエさんは笑いながら、ふっと真顔に戻る。
「朱羽さん。あなたは私がなぜ影でいるのかと聞いたわね。なぜ双子だと告げなかったのかと。ええ……、美幸は頭がよかったのよ。若くして銀座のホステスになるくらい知識も豊富だった。情報がいつも彼女に集まり、情報は彼女を聡明にさせた。そんな美幸と、悪知恵しか働かない私とは、まるで違うの。顔は同じだけれど、中身がまったく違う。似ていることと言えば、セックスの経験値が高いということかしら。なにせ美幸は、元風俗嬢。うまかったでしょう、渉さん」
専務はどもった。
……うまかったんだね。
沙紀さん、耐えて。