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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
 
 
「今だってそうだ! 妹を身代わりにさせて、そして俺や渉さんの幸せを邪魔しようとする! 口出しするのは母親気取りだからか!? 母親が憎ければ子供まで憎いか!? 憎いのは誰だ! なぜあなたの妹に、俺は気持ち悪く触られないといけないんだよ! そこまで俺は、どう扱ってもいいそんな虫けらのような存在なのか!?」

 美幸夫人だけではなく、タエさんも押し黙る。

 朱羽は、タエさんに向き直った。


「元はといえばあなたの恋慕のせいなんだろう!? なんであなたは、子供を巡ってドロドロとした愛憎劇が繰り広げられる忍月の屋敷で、妹を庇わなかった!? ざまあみろとでも思っていたのか!?」


 タエさんは怯えた顔をした。


「俺の父が振り向かないとわかった時点で、あなたは退散すべきだった! それをよってたかって妹の敵になるから、妹の暴走を止める奴がいなかったんだろう!? それなのに、よくのうのうと妹の代わりが出来るな! 妹のふりをして俺をどうこうできると思ったその傲慢さ、恥を知れ! さらに言えば、影武者の分際で次期当主を据えられると思うな、身の程を知れ!」

 空気が朱羽の怒りでびりびり震える。

「しゅ、朱羽さま、タエは……」

「あなたもだ、シゲさん! 長女なら父がいなくなった時点で、ふたりを問答無用で退散させるべきだった! 妹たちが壊れていくのを助長させたのは、あなたの責任もある!」

 シゲさんは押し黙った。


「確かに忍月はあなた達の親の敵だ。だが苦しんでいるのは、シゲさんの妹達だろうが! 忍月に染まって常識がわからなくなった妹達をなぜ殴ってでも、外に出さなかった。なぜあなたまで中に入ってきたんだ!」

「……わ、たしは……」
 

「教えて下さい」

 あたしは三人に言った。

「なぜそこまで嫌な思いをしていながら、朱羽の父親が死んでも尚、忍月にこだわるのですか? 渉さんや朱羽を傷つけることが目的なんですか?」


 ……あたしが知りたいのはそこだ。


 子供を巡って壊された美幸夫人の心もわからないでもないからだ。

 しかしあたしは、美幸夫人というひとは地位や権威に執着しているようには思えないのだ。
 
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