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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
  


 

「頼む。老い先短いこの老いぼれの願いを、叶えてはくれまいか」



 専務が静かに言った。

「沙紀を妻に認めて下さいますか?」

「もちろんだ!」


 朱羽も凛とした眼差しを向けた。

「陽菜も認めて下さいますか? 俺、シークレットムーンと……」

「ああ、陽菜さんと好きにしろ。タエと栄一郎がガタガタにした結城くんの会社を立て直すがいい。渉と忍月を継いでくれるのなら」

 当主はあたしと沙紀さんを見る。

「ワシも、沙紀さんと陽菜さんと話すのは楽しい。だからこの老いぼれの話相手になってくれまいか。また、す、すま……すま、ふぉっを教えてくれ」

 あたし達は泣き顔を見合わせて笑った。


「「はい、お祖父様!」」


 ……家族を失ったあたしに、母親と祖父が出来た。


「沙紀、来い」

 専務が沙紀さんに手を伸ばす。

「陽菜、おいで」

 朱羽が微笑んであたしに手を伸ばす。


 あたしと沙紀さんは手を握りながら、片手でパートナーの手を握る。


 新たに出来たひとつの輪。

 ひとつの家族。


「これからは、よろしくな。……ジジイ」

 にやりと、専務が笑った。

「よろしく。じいさん」

 朱羽が笑う。


 当主は……、


「ああ、よろしく。よろしく!」


 泣きながら笑った。

 
 当主がここまで破顔しているのを、過去誰かが見たことがあるのだろうか。……名取川文乃も見たことがあっただろうか。


 この家族は、これからだ。

 まだ残るわだかまりや問題は、皆で少しずつ解いていこう。


 あたし達はひとりじゃないのだから。






****


 いつもお読み下さる皆さま


 次から最終章、エピローグ部分になります。
 
 7月から始めてここまで1200頁超え、お読み下さって本当にありがとうございました。

 たくさんばっと更新したいのですが、リアルがばたばたしているために、僅かずつ夜遅く更新で申し訳ありません。今週で落ち着くかと思いますので、ご了承下さい。

 最終章は日常に戻(れるのかしら?)りたいと思うので、イチャラブ&オフィスラブを最後までご堪能下さいませ。


 感謝を込めて。


 2016.12.12 奏多 拝

 
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