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いじっぱりなシークレットムーン
第13章 Final Moon
あたしが当主に報告をしたその夜、三姉妹は屋敷から消えた。
手紙と、そしてあたしが渡したあの巾着を置いて。
その手紙を皆で見た。
専務と朱羽は複雑そうな顔をしていて、晴れやかな表情はしなかった。
美幸夫人は彼女なりの思いがあったことを感じ取ったのだろう。
……最後まで彼女は、ふたりに許しを請うことも、謝罪もしなかった。
彼女は悪女のままで、屋敷から消えたことになる。
「……出ていったか」
当主は、薄く笑っていた。
それは厄介者がいなくなったからと歓喜しているのではなく、なにやら彼女達に共感して称えているような……そんな気がした。
「ワシがすべて悪かったのだ。それを……聞かずにな」
その呟きは、心から悲しそうに悔いているかのように感じられて。
「……年を取りたくないものよ。昔の非情で無謀だった己の頭をかち割ってやりたい気分だ。すべてはワシが招いたことじゃった。ワシの妻を含めて、すべての女子を苦しめさせた」
未来は変えられる。
悪いことを悪いと認める潔さと度量があれば、人間はまた歩いていける。
「すべてを無くしてからいつもワシは思う。もっと違う選択はなかったのかと。だから今……これだけは後悔をしたくない。よくよく考えたのだ」
当主は椅子から立ち上がり、専務の元に歩んでその手を握ると、そのまま朱羽のところに歩いていき、反対の手で朱羽の手を握った。
「ワシの過ちが詰まった忍月を変えてくれ」
それは――。
「陽菜さんと沙紀さんが笑顔でいられるような、そんな本家と財閥にしてくれ。お前達の望みはすべて叶えよう。だからワシの、このジジの。家族になってはくれまいか」
当主は頭を下げた。
「今更だとは思う。今までワシは見て見ぬふりをして、力で押しつけることを当然と思っていた。ひとの心を忘れていた。ワシが償えることはなんでもする。だからこの家で、ワシに……笑顔を見せてくれまいか。……ワシは、お前達と話したい。嬉しかったのだ、求めていたのは、お前達だと実感したのだ」
それは、祖父としての姿。
あたしが求めていた姿。