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いじっぱりなシークレットムーン
第14章 Secret Moon
***
ご当主と和解してから一週間――。
専務……今や忍月コーポレーションの社長に就任する予定の渉さんと朱羽は、当主から色々な引き継ぎをして書庫に籠もって勉強し続けた。
正式公表の前に、ある程度の土台がなければ馬鹿にされるとのことで、一夜漬がいいところのあたしとは違う、よく出来た兄弟は、四日間でかなりの資料を読み込み、どこのファイルになにがあるのか空で言えるほどとなり、それを何十年もかかって覚えてきた当主は、ただ唖然としていた。
朱羽と一緒の部屋で堂々と寝泊まりなんて恥ずかしい~なんて思っていたのに、実際は朱羽の部屋で一緒に寝たのは、美幸夫人が出ていった夜だけで、それ以降はあたしは独り寝、朱羽と渉さんは書庫で寝ていた。
……あなた達のやる気を甘くみて、今日も実家でイチャイチャしていいのかな、なんてお馬鹿でお下劣なことを考えてしまってごめんなさい!
あたしと沙紀さんは、そんなふたりに差し入れやご当主の話し相手をしながも、使用人としての仕事は怠らず、食事も作りながら、その上で他の使用人達の統制に乗り出した。
沙紀さんは、自分が渉さんの恋人であることは一切口にしないで、女性であることを明かし、そして新しい体系を作りたいと話し出した。
沙紀さんは今まで屋敷に男のふりをして、使用人それぞれの個性をすでに把握していた。あたしは、男装している沙紀さんが使用人と仲良くしている場面は見ていなかったけれど、専務曰く、飾らない沙紀さんは人気者であったようで、気づけば沙紀さんを中心として笑いが生まれている。
使用人に虐げられた美幸夫人は、使用人達を拒絶し嫌悪した。
元使用人であったタエさんは、使用人達の力を侮った。
現在使用人であったシゲさんは、使用人を利用して噂を広めようとした。
誰一人として使用人の人権を認めようとしなかった女長姉妹とは違い、沙紀さんは等身大の目線から使用人に接し、従事者とはどうあるべきなのか、どう真心を尽くすべきなのかを、説いた。
さすがは現役秘書でありながら新人教育もしていたらしい沙紀さん、見ていると結構スパルタで、すぐ投げようとしちゃうから、あたしがアメ的役割をして宥めながら、指導にあたる。
渉さんと共に、本家に住むために沙紀さんは頑張っている。