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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon

薄く目を開けた課長が、ハアハア苦しげな息をしながらこちらを見ていた。
「お、お邪魔しました~」
本当に見ているのかわからないけれど、とりあえずあたしがベッドから降り立とうとしたらぐいと手を引かれ、再び課長の横に滑り込んだ。
思い切り添い寝スタイル。
再度逃亡を試みれば、あたしを見ているのかよくわからないその目から、ほろりと汗のような涙が零れた。
「苦しいんですか!?」
「……くな」
「え?」
「行くな」
まさかこれは高熱ゆえの甘えっ子ちゃんか!?
その割にはSっぽい甘え方だけれど、それでもなんだか母性本能を擽られたあたしは、思わずよしよしと頭を撫でてしまう。なされるがままの課長は、頼りなげな目を寄越して、不安そうにしている。
「ここに居ますから。だから安心して。ね?」
絶対信じていない目だ。
「約束しますから!」
「ん……」
病人が相手なんだ。
とにかくは病人から服を脱がせて、寝かせないといけない。
そのミッションを達成すべし!
ちょっと失礼して、仰向けにさせた課長の上に馬乗りになり、服を脱がすことにした。
「課長、ワイシャツ脱ぎますよ。ボタン外します」
……いや、なんかね。
熱出して具合悪くなっている病人に悪いんですけれど、
「……っ」
この無防備すぎる、艶めかしい生き物なんとかならないんだろうか。
半開きの唇から漏れているのは苦しい息だとわかるのに、セックスで喘いでいるように思えるのは、あたしがエロいからなんだろうか。
ハアハアする課長から一枚剥ぐ度に、あたしが課長を襲っているような錯覚を起こすのだけれど、女を脱がせたい男の気持ちって、こんな感じなのか。
考えない、これは上司だ!
なんとかシャツを脱がすと白いインナーが見えた。インナーは下から捲り上げればいい……そう思って万歳させたが、
「うおっ!」
意外に着やせした逞しい身体が出てきて、思わずあたしはガン見してしまった。
九年前――思えば彼の胸板は広かったけれど、薄かった。
九年後――男の身体になっている。
……触ってみたい。
だけど実行したら、ただの変態だ。

