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いじっぱりなシークレットムーン
第4章 Secret Crush Moon
 


「――っ」


 何度目だろうか――。

 またイッたあたしを感じ取った彼は、湿った唇をあたしの唇から離した。

 とろりとした目が向けられている。


 あたしの理性が彼に溺れることにストップをかけているのは、なぜなのか。病人だから? 上司だから? 忘れたい過去を持つから?


 秘部は蜜に溢れ、深い繋がりを望んでひくついている。

 彼を男として意識して、ドキドキもしている。


「ヒナ、挿れる?」


 だけど誘惑に耐えられるのは――、


「……寝たい」

「……。俺は寝れない。ヒナが横に居るのに」


 多分、あたしの意志がそこにはないからだ。


 わかってる。

 気持ちよくてあたしは喘いで、何回もイッた。


 あたしの身体は彼を求めているかもしれない。

 その身体を彼は求めているかもしれない。


 ……あたしは、身体をすぐ開く女だと思われている。

 きっと後ろ向きで攻め、あたしに果ての声を出させないのは、本気で向き合いたくないからだ。

 あたしはなに?

 性玩具?

 挿入したらあたしは性の捌け口になるの?


 身体だけの関係を露骨に求めていることが嫌になった。そしてそれに反応するあたしの身体も嫌になり、彼と結合までしたいと思わないのだ。


 どうして拒めないの。

 嫌なら、張り手でも食らわせて帰ればいいのに。そう、包帯の手を噛みついたっていい。逃げ道があるのに、それでも逃げようとしない自分。


 理由をつけてここに残り、彼から与えられる快感に酔っているだけじゃないか。

 自己嫌悪――。


「課長は、あたしに挿れたいんですか?」

 もぞもぞと起き上がった彼は、眼鏡のない分とても端正で、若く思える。年相応なのか。……あたしが通り過ぎた年に、彼はいる。

「挿れたい……」


 掠れた声が聞こえた。
 
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