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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
***
「ん……」
顔に降り注ぐ目映い陽光に顔を顰めながら、あたしは目を覚ました。
「ん……、今何時……? 会社……」
「今は七時。大丈夫、今日は会社休みだから」
「じゃあ、もうちょっと寝てる」
「おやすみ」
ころりと横に転がると、いい子いい子というように、優しく頭を撫でられた。なんでこんなところに手があるんだろうと、寝ぼけた頭でぼんやり考える。
………。
………?
………!
………!?
記号ばかりで進んだ思考回路が、ひとつの結論を導き出した。
はっとして反対側を向けば、陽光以上に眩しいイケメンの笑みがあり、心臓が内から破裂するかと思うほどに飛び上がった。
なに、この朝からどっきりは。
あたし昨日……。
――気持ちいい? ヒナ。
あたし……課長の指で……。
完全目が覚めた!!
え、あたし課長に腕枕されてたの!?
しかもあたしの片手、なんで課長と指絡め合わせて握ってるの!?
そんな感じで寝てたっけ?
え? え!?
「おはよう。寝れた?」
安らいだこの美しい微笑みに、朝から鼻血が出そうになる。
周囲の光の粒子がやけにキラキラして、目が霞みそうだ。
「お、起きてたんですか!?」
「ん」
「具合は?」
「おかげさまで良くなった。ぐっすり寝れたから」
「お熱測らないと……」
「さっき測ったら、37度1分。もう大丈夫」
「そうですか」
相変わらず穏やかな微笑み。
やだ、いつから起きていたんだろう!!
あたし化粧したまま寝てたんだ。こんなお日様当たるところなら、化粧が剥げて毛穴開いた顔の酷さが強調されるではないか!!
極上のイケメン前の羞恥プレイ。
28歳女子が気をつけねばならない肌事情。
結城ならイケメンでもすっぴん見られて平気だけれど、香月課長はなにか嫌だ。年下であたしよりすべすべとしたみずみずしいお肌を持っているから、という理由以上に、香月課長のその薄い茶色の瞳に、それがあたしだと映して貰いたくない。もうちょっと綺麗な姿を見て貰いたい。
しかも布団を足で踏んづけて寝ていたあたしの、中途半端に脱げかけたこの格好。初めて伺った異性の方のお宅で、なんとはしたない……。