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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
自暴自棄になっていたあいつが少しずつ身体を鍛えようとしたり勉強をしたりし始めた。生きようとする表情が出てきた。だけどまあ、俺以外には懐こうとしていなかったけれど。
変貌できるくらいのどんなWEBを見たんだろうと、ある日こっそりとそのパソコンでただひとつお気に入り登録をしているものを開くと、そこは日本の大学だった。難関大とはいえないけれど、そこそこ有名な大学のキャンパス説明のような頁で、大学生の写真で飾られていた。
その写真を一日何回もパソコンで見たり、挙げ句の果てにスマホにまで入れていたのを俺は知っている。
その大学に行きたいのかと思ったが、朱羽はこう答えた。
――無理。俺の年齢では絶対追いつかない。
朱羽は心臓の手術が成功して状態が落ち着くと、急速に知力を高めた。もともと頭はよかったけれど、あっという間に飛び級だ。
――渉さん。どうすれば俺、もっと大人になれる? 必要だって思われる? 年の差を埋めるために最短で大人になるためには!?
早く大人になりたいと焦っているように。
誰かと同じところに行き着きたいと願っていたかのように。
――……渉さん、お願いがある。向こうで調べて貰いたいひとがいる。名前はわからないんだけど……。
俺が日本に戻る辞令を受けた時、朱羽からすべてを聞いた上で頼まれた俺は、朱羽にひとつ提案をした。
そう、生きる希望を見いだした朱羽が、世間から一目置かれるような大人にすぐなれるための苦肉な策。
あまりに理不尽過ぎる選択肢を朱羽に突きつけた。
――朱羽、すぐに大人になるために捨てねばならないのが、今か未来かしか方法がなかったとしたら、どっちを捨てる?
――未来。俺が大人になりたいのは今なんだ。未来まで待てない。
そして俺も、ひと肌脱いだんだ――。
おいこら朱羽。
たかが八年の男に許すのか?
お前、時間がねぇんだぞ?
さっさとものにしろと言ったじゃねぇか。