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いじっぱりなシークレットムーン
第5章 Crazy Moon
~Wataru Side~
沙紀への前戯をたっぷり時間をかけ、至福の内にふたり弾ける予定を邪魔しやがったカバに、なんと男がいるらしい。
もしかすると朱羽がうちのシステム課に居た時に、窓からあいつが泣きそうな顔で見ていた……カバと連れ立つ後ろ姿の男かもしれねぇな。
あの男は八年を持ち出していたが、八年がなんだと言うんだ。そんなの朱羽が聞けば鼻で笑うだろう。
どうするつもりだ、朱羽?
てっきり俺も沙紀と同様、お前がカバに告ったか抱いてしまったのか、なにか既成事実を作ったのかと思ったが、お前なにカバをあっさり離してるんだよ。カバ、別の男とデートしてるんだぞ?
……俺さ、朱羽が可愛いんだわ。
お前があんなに荒れて大変でも、それでもお前は家に戻って、男を拾っては家に連れ込むあの色情狂のアバズレを見捨てず、生活費を与えていた。あんなアバズレを息子だという理由で面倒みながら、お前心臓発作を頻繁に起こすまで黙って我慢してたじゃねぇか。
あんな陰鬱な顔をして、すぐキレていた中学時代のお前を、俺がその前から知っていたのなら、守ってやれたのに。
俺がNY支店から一時帰国して、あの馬鹿臭い初顔合わせをした時に、お前が倒れたのを助けて話を聞き出してから、ようやく俺は事情を呑み込めて、アバズレを精神病院に入れて引き離し、朱羽をアメリカの病院で入院させ、あっちでお前の面倒をみた。
そうしなければならないほど、朱羽の心も体もぼろぼろだった。
だけど俺に懐かないし、感情が壊れているかのように無表情で。
……人間というもの自体を、信じていなさそうで。言うなれば、人間に虐待され、ぼろぼろの毛並みとなった捨て猫のような。
そんな朱羽が夜になると泣く。チサって誰だよ。お前がうなされる度に切なく呼ぶ名前は。お前のお袋、そんな名前じゃないぞ?
気力がないから身体も回復しねぇ。
これからどうすればいいのか俺が頭を抱えていた時、アメリカで陰鬱な表情のままネットをしていた朱羽は、ある時を境に突然変わりだした。