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いじっぱりなシークレットムーン
第2章 Nostalgic Moon
それでも――。
暴走してしまう自分の身体の変化が不安でたまらなかったあの頃に比べれば、満月の相手が結城ただひとりだけとなり、そしていつも通りの結城の態度が、ただ怯えて流される時間の中にいたあたしを救った。
変わらない結城のおかげで、結城と同じ日常側に生きられる――。
結城に迷惑かけているのはわかっている。
大学時代、結城は彼女がいたのに、その彼女とあたしは話したこともあったのに、満月の夜、あたしを優先させた結城は、それが原因で別れることになった。ただ家に来ただけではなく、結城はあたしを抱いていたのだ。あたしは、自分のために結城の恋愛を踏みにじった。
謝ったあたしに、結城は明るく笑い飛ばしてくれたけど、結城を寝取ったと彼女に思われるようなこと二度としたくないと思う。
結城にもう頼らない宣言したら、焦ったようにこう言われた。
――だったら、お互いフリーの時! それだったら問題ないだろ?
あたしは恋するつもりがないからいつもフリーだけれど、結城は顔もいいし優しいし楽しいからモテる。彼女が出来るのも時間の問題だろうとその案を吞むことにした。
つまり結城がフリーな時、満月の夜限定ということで。
だけど結城に彼女が出来る気配がない。
――この歳になったら、色々面倒でさ。
もし結城に特別な存在が出来たら、あたしは満月に結城と寝ない。
大切な友人だと思えばこそ、結城に幸せになって貰いたいから――。
――私のことが気になるんですか?
結城に支えられた日常は、香月朱羽の存在で揺らいだ気がする。
黒歴史として忘れていた相手に、どうして欲情したの?
どうして、満月のように制御不能に陥ったの?
九年ぶりにあった相手に、しかも年下であたしに悪感情抱いていた相手に。あたしはそこまでMだったろうか。彼は、そこまで性的魅力に溢れていたのだろうか。
あの目に、惹きつけられたのだ。
満月の如く、吸引力のあるあの目に、あたしは――。
昔より大人になった。
昔より肩幅が広くなった。
昔より身長が伸びて、声が低く落ち着いた。
年下だということを忘れるくらい、彼はいい男になった。