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いじっぱりなシークレットムーン
第3章 Full Moon
***
次の日――。
睡眠薬のおかげでぐっすり眠ることが出来たあたしは、いつも通りの顔で起床することが出来た。精神も落ち着いている。
大丈夫、まだ満月の影響は身体に出ない。
やはり昨日のあれは、なにかの間違いだったんだ。
スマホを見たら、昨日の日付で衣里と結城からLINEが来ていた。衣里は昨日出張から帰ったこと、結城は早く寝ろよの一言。
ふたりに寝ていた旨伝えたら、ふたり早々に既読がついた。会社で謝らなきゃ。
洗顔して化粧をし、髪を結い上げた。白いブラウスに黒のタイトスカート姿でパンを囓りながら、朝刊に目を通す。時間になったら、グレーの裾の長い上着を羽織って、1LDKのマンションを出た。
あたしのマンションは、隣の江戸川区葛西にあるから、会社までは地下鉄通い。
午前7時、OSHIZUKIビル到着。
このビルは、基本夜中1時~5時まで鍵がかかるが、正面玄関にいる警備員に身分証を見せれば、いつでも出入り可能である。
シークレットムーンは始業が9時からだが、8時には皆が多く集まるため、あたしはそれより1時間早く会社に来る。
ムーンでの新人時代から続けている、皆の机を拭くために。たとえ会社の規模が大きくなったとしても、あたしが既に新人でなくなっていても、これをやらないとあたしの1日は始まらない。
恐らく皆、あたしが朝机を拭いていることは知らないだろう。だが別に皆から感謝されたくてしているわけはない。仲間として今日も一緒に頑張ろうという、自己満足な挨拶をしてるだけだ。