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いじっぱりなシークレットムーン
第6章 Wishing Moon
そう思ったのは、結城が満月の相手をするようになって……。
「いや、違う。結城には最初から警戒心がなかったから、友達になったんだ」
――……俺の高校、N県の扇谷なんだよ。
「男を警戒していたのに、結城は別で。……なんで最初から別だと思えたんだろう。あの頃、千里ちゃんがいたとはいえ、結城の家にも行ってたしふたりでも遊んでた。結城だけは普通の男とは違い特別だと、満月のこと知られる前からもそう思ってて……」
――お前はそこを卒業していない。
「そう最初から、結城は初めて会った気はしなかった。え、なんで?」
――……だけど言えない。どうしても言えない。……お前が今、香月に満月のことが言えないように。
頭がぐらぐらして、また満月がちらついてきてしまったために、あたしはバッグから安定剤を取り出し、ペットボトルの水で体内に流し込んだ。
これで不安定な精神は安定してくるだろう。
結城を信頼していることに疑問を持つなど馬鹿げたことを思わず。
部屋がやけに広く思えた。
今は居ない課長の存在感が大きいことを物語っている。
いつも朝すぐ帰ったあたしを見ている結城も、九年前に寝ている間にひとりにされた課長も、ひとり置かれた寂しさを抱えていたのだろうか。
重ね合わせた肌の熱を、無性に恋しく思ったのだろうか。
自由に羽ばたけないよう、自分の腕に閉じ込めたいと思ったのだろうか。
今のあたしのように――。