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いじっぱりなシークレットムーン
第7章 Waning moon
 

 ***


「元気になったか、カワウソ~!! 寂しかったぞ~!!」

 会社で真っ先に出迎えてくれたのは、地味な黒の背広を着ている社長だ。

 普通の色の背広を持っていたことに少し驚きながら、いつも元気な社長の頬がこけて、痩せたように思えたことの方に大きく驚愕する。

 いつも自分の会社の倒産危機がないのかと思うくらい、飄々としていた社長だけれど、今回はかなりこたえているのか。


「ご迷惑おかけしました。遅刻してすみません。もう大丈夫ですから」

 視線を感じると衣里だ。結城は電話をかけている。

 衣里が親指を突き上げ、多分これは"ファイト"あたりだろう。あたしもこっそりと同じ仕草を返した。

 家に帰って服を着替えて会社にくるまでに、衣里と結城にLINEで返信してある。

 遅刻理由は"ピーゴロゴロ"。これなら止まればすぐ駆けつけられる。

「おはようございます、課長」

 なにもなかったような顔をして、あたしはにっこりと笑う。

「おはようございます、主任。具合はいかがですか?」

 さすがは鉄仮面、氷の微笑を向けてくる。

 それを見ていれば、昨夜あたしのお口でイッたことが夢のようだ。

「はい。正露丸が効きました。遅刻してすみませんでした」

「回復なされたのなら、よかったです」

 キラキラキラ。

 課長、鉄仮面外れてます!

 この美しい笑みが素だとしたら、イケメン度どれだけよ?
 
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