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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
***
夢を見た。
あたしは高校時代の、赤いリボンをつけたセーラー服を着ている。
通り過ぎる景色が、見慣れた正門、古ぼけた赤煉瓦の喫茶店、寂れた小さな社がある神社、遊具がない小さな公園、コンクリート塀で挟まれた緩やかな上り坂と移り変わるのは、高校から自宅に向かっているのだろう。
やがて、自宅にほど近い三叉路にさしかかると、後ろから声をかけられた。
学ランを着て自転車を漕ぐ、見慣れた顔の五人の男子生徒の集団だ。
「あれ、――は?」
いつも中心にいるはずのあたしの彼氏がいない。
集団は朗らかに言った。
彼は後でうちに来ると。だからそれまで、うちに居ていいかと。
「勿論いいよ。でもチサはバイトで家に居ないよ? チサか――が戻って来たら、携帯に連絡しようか? それまでどこかで遊んでれば?」
妹はかなりの美少女で、彼女目当てによく彼らはうちに集っていた。
彼らはなぜかにやにやしながらあたしを見て、そして言った。
「――がさ、面白いゲームをしようって言うからさ。お前の家で遊ぶよ」
彼らが口にしたのは、彼氏ではない名前。
「うちで? で、その――は?」
「ここで待ち合わせ。……ああ、来た来た」
あたしは、――が苦手だった。
同い年に思えない、昏く澱んだその瞳を見ていると、なにか危険な道を外してしまいそうな……そんな危うさがあるのだ。
――は、馬鹿で明るい彼氏とは違い廃れた感じがして、キレたら怖い……そんな危うさがある、典型的不良の厄介なタイプに思えたからだ。
彼氏は友達だと言っているが、どうしても彼には彼氏に対して友情というものを感じなかったのだ。彼氏を見る目が冷ややかすぎて。
「おーい、――!! 意外に早かったな」
皆が興奮気味にあたしの背後に手を振る。
現れたのは……。