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いじっぱりなシークレットムーン
第8章 Blue Moon
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目が覚めると――、
「よかった起きて。うなされてたよ、怖い夢でも見た?」
朱羽が心配そうな顔であたしの前髪を掻き上げるようにして、頭を撫でていた。
心配そうながらも、甘い甘い朱羽の顔が至近距離にある。
あたしは腕というより、彼の胸に頭をつけ、彼の片手で胸に抱かれるようにして寝ていたようだ。
朝の光が差し込んでいて、朱羽が朝霞に包まれぼんやりと見える。
気怠げな朱羽の美貌。あたしに向けられるとろりとした目は眠いのか色気なのかよくわからない。
どこか朱羽の線が霞んでいるように思えるのは、あたしもまだ微睡んでいるのか。
「あ……夢?」
どちらが夢なのかわからなくて、軽く混乱してしまう。
ここに朱羽と抱き合うようにして、ひとつの布団に入っていることか。
それとも、思い出したくないと忌避して記憶に封印していた高校時代か。
「どんな夢?」
頭を傾げるようにして、あたしの顔を覗き込む。
……どこか霞む朱羽が消えないように、あたしもまたじっと朱羽の顔を見つめると、綺麗な微笑みを向けられる。
「高校の頃の。今まで見たことなかったのに」
「……。故郷の土地に居て、俺に秘密を話したからかもしれないね」
ああ、この眠たそうにも思える甘ったるい声も、身体に悪い。
連鎖反応のように甘えたくなる。
「記憶……とも違うような。現在と混ざっている」
「え?」
「結城が若返って……学ラン着て出てきたの。ありえないけど、驚いて」
「結城さんが?」
「そう。あたしを罵倒した彼氏の友達で、あたしが苦手だった男で。しかも名前も違うというのに」
「なんて名前?」
「あ……わからないや。実際、元彼の友達は沢山居て、妹目当てでうちに来たのに、顔も思い出せない。多分……、結城があたしの同級生みたいなおかしなことを言ったから、そんな夢になったんだと思うけど……」
「……あなたのハジメテの相手って、その嫌な元彼?」
「あたしの……ハジメテ?」
まっすぐな茶色い瞳に、不思議そうな顔をしたあたしが映る。
「……多分、そうだと思う。それ以前に、付き合った記憶がないから」
朱羽は怪訝そうな顔を向けてくる。