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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「うん、大丈夫。朱羽のおかげで克服できたかもしれない。こうやって満月の夜景が見れるのなんて本当に久しぶり」
「よかったね。これからは今まで見れなかった分、何度も一緒に見ようね。あ……」
朱羽が浴槽の縁に置かれてあった、英語のラベルの小さな小瓶を見つけたようだ。色違いで全部で8つあり、なんなのかよくわからない。
朱羽はそのうちのひとつのキャップを外すと、湯の上に垂らした。
「はい、陽菜。湯を叩くように手をバタバタさせて?」
「え、バタバタ……こう?」
もこもこと膨らんでくる、薄いオレンジ色の泡。
そしてこの匂い……。
「イランイランだよ。いやらしい気分になってきた?」
朱羽の香りが強まって広がる。
目を瞑れば、朱羽がたくさんいてあたしを愛してくれているような、そんな倒錯的な幻想が瞼の裏を過ぎる。
「ふふ、いやらしい朱羽がたくさ……ん……っ」
朱羽があたしの耳をなぶった。
「は……ぁっ」
「そうだよ、俺はいやらしいよ?」
朱羽の舌が耳殻の溝を這い、あたしは身震いした。
あたしが動く度、繊細な泡があたしの身体を愛撫しているようで、迂闊に動けない。
「だけどあなた限定だ。いやらしいあなたに、俺調教されたから」
「調教って……」
あたしの声も知らずに甘くなる。
朱羽の舌が耳の穴から忍んでくる。濡れた舌の音が鼓膜に届いて、思わず朱羽に凭れさせるようにして、甘い刺激に震える。
「俺を……あなた好みの男にして?」
喘ぐような甘い声が聞こえて、ぞくぞくした。
湯より朱羽の息の方が熱い。熱くてのぼせそうだ。
「俺から……この先、離れられないように」
「朱、羽……」
鼻腔に広がる魅惑的なイランイランの香りは、あたしを乱れさせる。
「……あなたから離れられない、俺のように」
甘い言葉と甘い声音が、あたしを煽っていく。
「好きだよ、陽菜。本当に……好きだ」
甘い魔法にかかり、あたしも譫言のように声を漏らす。
「あたしも好き……。どうしていいかわからないくらい」
振り向こうとしたら、顔を出していた朱羽に唇を奪われた。
「ん……」
背中で感じる朱羽の肌と湯に、脳が蕩けそうだ。