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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
朱羽になにをして貰おうかな。
ひとには気難しいけどあたしに甘える猫ちゃんに、猫耳つけて招き猫みたいに手を丸めて、にゃんと言って貰うとか、萌えるわ~。
「……勝つ気でいるんだ?」
「勿論!! 四回で九個のボールを入れられるわけないでしょう。さすがの朱羽くんでも。それだったら玉があっちこっちいくなら、ポケットの傍にきたボールをちょんと突いて落とせる可能性があるあたしの方が勝てる!」
人差し指を突きつけて言ってから、はっとした。
「……そうか。そうだよな、俺そんなこと出来ないように見えるよな」
……なんだ、この自身ありげな顔。
だって九個を四回ですべて入れるなんて、無理だって。
「絶対、あなたを抱く!!」
朱羽が肩を回して準備運動。
「絶対、にゃんさせてやる!!」
あたしは、シュッシュッと打つ練習。少し玉を打つ練習をさせて貰ったら、なかなかにいい音が出るようになった。
朱羽は余裕があるのか、まっすぐポケットを狙わずに、ぶつけて入れる方法も教えてくれた。角度がどうの、さすがは理系。さっぱりな文系は、原始的にまっすぐ行くべし。
朱羽が三角の形になるように、台の真ん中に九個のボールを置いた。
「最初に崩すのはブレイクショットと言うんだけれど、力がいるから俺がやるね。これから一回目でいい?」
「いいけど、その方が大変な気が……」
「あははは。まあ見てて?」
穏やかそうな顔なのに、キューを引いて手玉を見据える眼差しは険しく、思わず惚れ惚れしてしまう。
「あのねぇ、陽菜。そんなにじっくり俺の顔見ないで、気が散るから。後ろにいて、後ろ」
あたしは舌打ちしながら後ろに下がった。
キューから打たれた白い玉がスピードをあげて九個のボールにあたる。硬質の音をたててボールは勢いよく台の端から端まで転がっり、そのうちの四つが吸い込まれるようにポケットの中に入った。
「久しぶりだから、ちょっと満足出来ないなぁ」
朱羽が腰に片手をあてて苦笑するが、あたしは唖然としていた。なんであの一発で玉がポケットに向かっていったのだろう。
これは、朱羽はかなりの腕前なんだろうか。
いやいや、それでも残るボールはポケットの近くにある。これはあたしにチャンスだ。