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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「渉さんも、渉さんが選んだ沙紀さんも、俺の家族みたいなものだ」
そしてそれをきちんと朱羽は受け取っている。
今の落ち着いた朱羽があるのは、専務と沙紀さんのおかげだろうと思ったら、ちょっぴり妬けてしまった。
「だからあなたも、あのふたりを家族みたいに思ってくれたら嬉しい。俺の好きなひとが、俺の大切なひとを好きになってくれたら……」
「あたし、あのふたり好きだよ? 楽しいよ?」
「……よかった。だったら……今年のクリスマス、今から予約入れるよ?」
「え?」
「あなたと恋人同士になっても、遠慮無くからかいに渉さんと沙紀さんは来るだろうし、中々ふたりにはなれないかもしれないけど、夜はふたりになれるから。一緒に過ごそう?」
「……っ」
まだ二ヶ月くらいあるけれど、それでもその先も傍にいてくれるんだね。
あたしの誕生日、朱羽と過ごせるんだったら嬉しい。
「あなたはどう過ごしていたの、クリスマス」
あたしは……結城と衣里がクラッカー鳴らして家にやってきて、いつもわいわいだった。
「結城さんと真下さん?」
「うん、そう。壁薄いのにクラッカー鳴らしたから苦情が出た」
「ふふ。だったら……、彼らがいいと言ったら、彼らも呼べばいい。俺にとって渉さんと沙紀さんが家族なら、あなたにとって結城さんと真下さんが家族なのは俺も十分わかっているつもりだから。俺もあなたもお互い過ごしてきたクリスマスがあるんだから、それを壊さないで皆で一緒に楽しめるといいね」
結城を傷つけて朱羽の元にいるのに、そんなこと……出来るのだろうか。
そう思えども、そうした風景を想像するだけで笑みが零れる。
「ということで、オーブンの調子を見るためにも、その前にうちに来て作ってね」
「うん……」
愛するひとのためにケーキを作るなんて、すごく幸せだ。……だけど、朱羽の家で作る前に、必死で家で練習しなきゃ。絶対朱羽の方が料理は上手そうだから。