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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「杏奈、そんなに凄いんだ……」
「彼女の受賞歴は世界に通用するものだからね。そう思えば、陽菜。なんで彼女を、向島は本気で欲しがらないのだと思う? 彼女なら、Robert Martingも認めると思うのに」
「え……」
確かにそうだ。
朱羽が欲しいなら、朱羽も認めているシークレットムーンのプログラムの基幹となる杏奈だって、欲しがられてもいいはず。そう今だって、朱羽と杏奈を引き抜けば、シークレットムーンは大打撃なのだから。
あたしなんかより、杏奈に目をつけた方がよほどいい。千絵ちゃんだって仲がよかった杏奈を真っ先に声をかけそうだ。
あ、声をかけられても残ったんだっけ、杏奈。
そこまで杏奈が凄いなら、千絵ちゃんではなく、向島自体が動いてもいいはずだけれど、杏奈が引き抜かれているような様子は全くない。
「き、奇抜だから?」
「……向島も実力主義だ。どんな格好だろうと実力さえあれば認められる。……彼女が来たのは、ムーンがシークレットムーンになった、二年前だったよね。中途採用で」
「うん」
「あの格好はいつからだとか聞いてる?」
「一年前、つまり三年前からのはず」
「なんでとかは?」
「いや特には。目覚めちゃったの~と言われて、ああ、そうかって」
一体杏奈の何がひっかかるのだろう。
「俺はね、陽菜。向島専務が本当に欲しがっているのは、彼女だと思う。時期も合うから」
「え、えええ!? なんで? プログラム強いから? 千絵ちゃん以外に杏奈に声がけしてたのかな」
「多分していないだろう。彼女はシークレットムーンにした渉さんに守られ、中核にいて簡単に引き抜きできない状況にいた。同時に……彼は、そんな強引なことを彼女にはできなかった」
「な、なんで?」
杏奈は奇抜だけれど、ちゃんとひとの話は理解できる。格好と物言いはおかしいけれど、優しいし物事をちゃんとよく見ている。
朱羽はあたしを見据えて言った。
「三上さんこそ、向島専務が結婚しようとしていた相手だと思う。
――三年前に彼と破局した」