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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「そんなことないよ。そんなこと……ありえない。そんなこと俺が許さない。あなたを置いていくなど……。そうならないために、俺は頑張ってきたから……。だから大丈夫、そんなこと思わなくても」
「……っ」
朱羽には、なにかあるのだと……あたしは強く思った。
朱羽から話してくれることを待とうと思っていた。だけどなにか、もっと急いで動かないといけないような、そんな焦った気持ちになるのだ。
両想いになって、まだ一日しか経っていないというのに。
彼が時折見せる遠い目が。現実を妙に諦観しているような"囚われ人"の話が。誰かが彼をその腕に抱こうとしているかのようで。
あたしのものなのに、それは期間限定なだけで、いずれは朱羽の意志であたしから離れてしまうような、そんな危機感。
「あたしも朱羽に、秘密を話したんだよ? あたしも怖かったけど、朱羽に受け止めて欲しいと思ったから。朱羽は、あたしが信用できない? あたしは受け止められないと思う?」
「そうじゃない。そうじゃないけど……っ」
あたしを心酔させる朱羽の匂いが、今は切なくて。
「……今はただの恋人で居たいんだ……。……言うから、もう少ししたらあなたにちゃんと。だから今は……なにも知らない、いつものあなたでいて。あなたのことが好きで仕方がない、ただの香月朱羽で居させて。あなたを九年前から好きだった、ただの香月朱羽を愛して」
……そう呟く彼に、今はまだ朱羽の心に踏み込める時期ではないことを直感的に悟り、好きだからこそ拒まれたようで、なんだか悲しくなった。
「俺を信じて。俺はあなたから離れないためにここにいる。あなたを残してどこかに行かないから。俺はあなたと未来を歩むから」
それはまるで自分に言い聞かせているかのようで。