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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
――まだ俺、あいつのこと引き摺ると思うけど、仲違いしたくねぇんだ。見せつけられたりして、友達を超えたことをしでかしそうになったら、俺の頭ぶん殴ってくれ。鹿沼に対しても、香月に対しても。俺はあいつら失いたくねぇからさ。勿論お前も。
所詮私は付け足し程度。
雅さんの顔をして、結城もまた、私ではない違うひとを想う。
切ないね、こんなに顔を合わせているのに、私とふたりで飲む男はこうまでして私の顔を見ない。
だけどあんたと居ながら雅さんを思い出してる私も私だ。
雅さんへの恋心を募らせながら、痛ましい顔よりは、脳天気な笑顔が見たいと思い、静かに笑う。
――やりなよ、社長。社長として、社員である陽菜を愛してやんな。それくらい、陽菜を見続けたあんたに許されてもいいと思う。
――真下……。
――あんたは100のうち、99はダメダメだけど、1つはいいところがある。そこに皆が救われているんだから。
――はは、厳しいな。1つしかねぇのかよ。
――笑え。あんたの笑う顔に、陽菜も癒やされてきた。そこは自信もっていいところだから。だから辛くても笑え。笑えばきっと……本当になるから。
――そう……だな。踏ん張って笑うわ。
そして午前様で別れて、再び顔を合わせた結城は元気になったのかと思いきや、酒がまだ抜けていないらしく二日酔いが辛そうだ。
私は結城が時計を見ながら陽菜の姿を探していたのを知っている。
馬鹿だね、あんたが陽菜におやつの時間に帰って来いなんて言うからでしょ。おやつまであと三時間もあるというのに。
絶対いちゃいちゃしているのを想像して、落ち込んでもう何度目になるのかタバコを吸ってくると病室を出て、とうとうエレベータで鉢合わせか。
「よ、よう~、早かったなあ」
引き攣ったような奴の挨拶。
あれは全然笑えていない。
……なんだ? 陽菜と香月がいちゃついてでもいたのか。