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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「……なんか嫁に出す気分なんだけど」
結城が笑えば、
「今から練習しておいて下さい」
香月も笑う。
こいついい度胸だ。陽菜なんか全然会話についていけてないじゃない。なに勝手に陽菜の人生決めてるんだよ。
笑いがとまらない。
「あなたは、彼女の……陽菜の、友情を超えた家族であることには間違いない。彼女におけるあなたへの愛情も否定したくないし、あなたの中の彼女への愛情も否定しない」
「おいおい、付き合ってそれは……」
「朱羽……」
「……それが俺に出来る最大限の譲歩です。俺はあなたの意向を無視して勝手に彼女を恋人にしました。だけど、本当に勝手ですけど……あなたとの断絶を俺も陽菜も望んでいない。だから俺を恨んでも殴ってもいいから、彼女との友情を続けて貰えませんか」
香月は深々と頭を下げた。
「そんな顔をさせてしまい、本当にすみません!!」
……香月、結城が死にそうな顔をしているのは、ただの二日酔いだから。
私は香月のことはよく知らない。なんで陽菜が夢中になって、結城が香月との友情を温めたいのかも。雅さんがなんで困窮した会社に彼を入れたのか、忍月の専務まで頼りにしている彼は、私から見れば、私同様、隠すべきものがあるために感情を外に出さないようにしているタイプのもので。
頭がいい顔がいい。あの筋肉馬鹿とはまるで違うエリートだから、陽菜と結城が惹かれたわけではなさそうだ。
香月って、馬鹿がつくほど真面目で律儀なんだ。ひと慣れもしていなさそう。……だから香月はわからない。彼が受けている好意を。
「なんで友情、鹿沼限定?」
「は?」
……ひとのよさを見抜くのは結城が上か。
「お前ともだろう?」
ははは、香月のあの表情。理解不能とでも言いたそうに、眉間に縦皺刻ませているよ。