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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon
「あれ、衣里!!」
「なんなの、あのいいところで純粋培養されたようなあんたの彼氏。まるで昔の私みたいなんだけれど」
――そう、まず友達になろう、衣里。
雅さんに言われて戸惑う私みたいに。
「友達というものはだな、まずはこうされた手のひらをパチンと叩くんだ、こういう風に」
結城が笑って、むりやり上げさせた手のひらに自分の手のひらをぶつけた。そんなこと、私や陽菜にもしないくせに、やっぱり同性は違うのかしら。
パシーン!!
爽快な音が、不穏だった空間に広がる。
雨雲を消し去ったのは、曖昧に流さなかった陽菜の勇気と、勝ち誇らずに結城に見せた香月の真摯さと、踏ん張って笑った結城の男気。
今三人に広がるのは、見事な快晴――そんな気分にさせる、新たなる関係がある。
もう愉快でたまらない。
なんなのこのオチ。
結局結城のあの天真爛漫な笑い顔を引き出したのは、恋敵っていうことか。
まあいいけどさ、昨夜は結城のおごりだったしさ。あんな結城の姿、私……黙っててあげるから。楽しければいいね、男の友達。
「……まだ、専務にはっきりと返事してなかったけど、俺の大事な友達であるお前らには先に言っておくわ」
結城がいつもの調子を取り戻して言った。
すっきりした顔をしているのは、結城なりの心の整理が少しついたのだろう。
「俺、社長……精一杯頑張ってみようと思う。……力を貸してくれ」
私達は返事の代わりに、笑いながら結城を手で叩いた。さすがに香月は笑うだけだったけれど、結城と握手している。
――そうこなくっちゃ。
結城のはったりで忍月の連中を黙らせて、雅さんの会社をなんとしてでも守ろうと、そう皆で誓いあった。