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いじっぱりなシークレットムーン
第9章 Lovely Moon


「はは、なに簡単に言うんだよ、相手はそこらへんの大企業ではなく、政界にも進出している向島財閥と言っても過言じゃねぇぞ?」

 専務は笑う。

「それでも、俺は最後まで戦います。このままただやられているわけにはいかない。俺は、親父が建てた自分の"家"を守ります」

 専務がぐるりとあたし達を見渡した。

 あたし達は強く頷き、結城に賛同していることを専務に告げた。

「……向島が退けば、それだけで副社長の力は弱まる。それは俺にとっては願ったり叶ったりだが、本当にお前、社長をやりきれる自信はあるか?」

 結城は強張った顔のまま直立して、専務に頭を下げた。

「俺、根性だけは誰にも負けません。だからどうか……ご指導よろしくお願いします」

 その横で杏奈も頭を下げた。

「今まで守って下さってありがとうございます。私も戦います、今度こそ隠れていないで正々堂々と、シークレットムーンの一員として。結城社長の下に」

「――っ!!! 月代さん。もうこうなれば大丈夫です、信じましょう」

 専務がもう泣きそうな顔で、身体を屈ませて社長に言うと、社長は……唇を震わせて、ぽろぽと涙を零しながら、専務の腕をぽんぽんと叩いて言った。

「俺の子供達を、信じる……」


 負けないよ、シークレットムーンは。

 あたしの横に朱羽が立っていた。朱羽がひとに見られないように、あたしの手を握り自分の背中に持っていく。

「陽菜、俺……頑張るから」

「……うん、あたしも」

「向島だけじゃない、すべてに」

「え?」

 見上げた朱羽の横顔は厳しく。

「キツいのは俺だけじゃない。それをバネにして、俺は絶対……あなたを離さないから」

「朱羽?」

「……あなたに、三上さんと同じ選択は絶対させない」


 朱羽はなにを考えているのだろう。

 あたしが、朱羽から逃げるのだと思っているのだろうか。

 朱羽は、あたしの手をさらに強くぎゅうっと握った。

 
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