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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon

さらに、結城や衣里だけではなく営業社員が頑張って売りまくるため、朱羽と杏奈が作ったプログラムは、向島のとは正反対に良い評価をネットで受けて、滑り出し好調というところだ。
……そして木曜日、朝九時――。
会社の様子を見に出社した朱羽から、あたしのスマホに電話が来た。
『陽菜、向島の顧問弁護士から訴訟する旨の内容証明が送られてきた!』
「は!? 訴訟!? 向島から!?」
あたしの声に驚いて、病室に居る専務と結城と杏奈、全員がやってくる。
『とりあえず、タブレットの方に写メ送るから』
あたしは慌てて、自分用のタブレットを出した。
「どうした、カバ」
「向島が訴訟を起こしたようなんです、うちに」
「は!? どういうことだよ、それ!!」
「わからないよ、結城。今、朱羽が内容証明を写真撮ったの送ってくれる」
皆がタブレットの画面を覗いた時だった。
コンコン。
返事もしていないのに、勝手にがらりと病室のドアが横にスライドし、
「俺からのラブレターは、届いたか?」
光沢あるグレー色の長いコートを着た向島専務が、開かれたドアに寄りかかるように、腕組をして立っていた。
「訴訟内容は、我が向島開発で独自に開発したプログラムの一部が、シークレットムーンで最新で作られたパッケージソフト中に含まれていたこと。こちらは特許をとっているから、特許権侵害により」
そして彼は嘲るように、口元をつり上げて笑う。
「差止請求及び損害賠償請求を」
つまりうちが好調な滑り出しを見せたあのプログラムソフトをもう売るのは許さない。そして、向島にパクってしまってごめんなさいと、慰謝料を払え。
……そういう訴訟をされたのだ。

