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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon

「向島、お前……っ」
宮坂専務が憤って、向島専務を睨み付けるが、向島専務は見向きもしない。友達だったふたりの再会は、決して喜ばしいものではなかった。
「なんで、そんな訴訟が可能なんだ。特許権なんか侵害してねぇぞ」
結城が怒鳴ると、向島専務は静かに言った。
「そちらのソフトのプログラムに、うちが特許を申請したのと同じプログラムが入っている。そうしたアルゴリズムを得意とする同じ奴の……癖によって。詳細な解析結果を出さずとも、思い当たるところはあるだろう」
そのまま、斜めから……杏奈を射る。
「たとえどれもがお前が作ったものであろうと、特許はすべてに優先される」
あたしは慌てて怯える杏奈を背に隠すと、向島専務はふっと諦観したように笑いながら俯いて言った。
「訴訟を取り消す条件を言おう。以下の3つの条件のうちどれかを選べ。
1.鹿沼陽菜を向島に渡す。
2.三上杏奈を向島に渡す。
3.香月朱羽を向島に渡す」
頭の中が怒りで真っ白になる。
ただわかるのは、今日まで向島がなんの反撃もしていなかったのは、法的手段で脅す準備を整えていたのだろうこと
宮坂専務も辟易するような悪い方向へと変貌してしまった彼は、盗聴器誘導如きで揺らぐような男ではなかったんだ。
朱羽、朱羽……帰ってきて。
あたしどうすればいい。
この窮地をどう切り抜ければいい?
朱羽がいないまま、非情な宣告が室内に響き渡った――。
「明日の金曜日、夜7時までに向島開発の俺の部屋にそいつひとりで来い。
もし誰も来ない、或いは違う奴が来た場合は、即時に訴訟する。そしてこの先、どんな条件を提示してきても、もう二度と……訴訟は取り消さない」

