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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon

***
病室に戻ると、沙紀さんが増えて衣里も戻っていたようで、なにやら皆難しい顔をしていた。作戦の議論が思い浮かばないのかなと思い、物音をたてないようにしていたら、朱羽が凜とした声を張り上げた。
「ただいま!! 帰りました!!」
朱羽にとって、あたし達が居る場所が「ただいま」と言える場所になったのかと、じーんと感動していると、朱羽の声に結城と衣里と杏奈と木島くんと、専務と沙紀さん……全員が一斉にあたしを見て、一斉にあたしに向かって駆けてくる。
「な、なに? なに? なになに?」
思わず本能的に逃げ腰になると、衣里があたしに抱きついてきて結城が笑ってあたしの髪をぐしゃぐしゃにした。杏奈が泣く、木島くんが貰い泣き。そして専務と沙紀さんは苦笑して、専務が代表して口を開いた。
「だから、結城の言った通り、朱羽は絶対連れ帰ると言っただろうが」
「え……と?」
結城が言った。
「お前、黙って部屋を出ただろう。お前が向島に行ってしまったのかと皆で焦った。そんな時香月がすぐ動いたから、俺、皆に言ってたんだ」
――鹿沼のことは、香月に任せろ。地の果てでもあいつは鹿沼を探して、必ず一緒に帰ってくるから。
「その実、ひやひやしててよ。だけど、さすがは香月!!」
朱羽がバンバンと朱羽の肩を叩く横で、衣里があたしに言う。
「私が帰ってきた時、陽菜がすごく思い詰めた顔をしていたからもしかしてと、皆が通夜みたいな顔で口々に言ってて。陽菜が馬鹿なことをしでかす前に連れ戻さなきゃと探しに行こうとしたんだけれど、この馬鹿が、香月は絶対陽菜を連れて帰るから信じて待てなんて、馬鹿力で腕を掴んで引き留めるから、探しにも行けなくて。……あと5分遅かったら、私この馬鹿全力で殴り飛ばしてあんたを探しに行ってた」

