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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
あたりは暗くなっていたが、闇夜に輝く朱羽の銀色フェラーリ。滑らかな曲線が綺麗な車は、どう見てもオンボロマンションの前に停車しているのはミスマッチだ。
朱羽は、トランクを開けてあたしの荷物を入れた。
あたしは二人乗りの車に、荷物をどこに入れるのだろう、もしかするとあたしがお膝にだっこするのかなど考えていたが、ちゃんと後ろにトランクルームはあった。
普通の四人乗用のセダンなら、大体車体の幅くらいはトランクがあるが、フェラーリの場合は本当に少しだけだ。さすがは高級車、荷物を持ち込まずドライブを楽しめということかしら。
フェラーリはエンジンが後ろにあれば、ボンネットを上げた中にもっと小さなトランクムールがあるらしい。フェラーリの中でも、朱羽がもっているものはトランクスペースが大きい方だとか。
「だけど多くは積められないんだ。ルーフパネルを格納するから」
助手席といったら左側のイメージがあるあたしは、朱羽に手を引かれて反対側に連れられた。
「もしかしてこれは、オープンカーになるって奴?」
「そう。さあ、乗って?」
朱羽が助手席のドアを開けた時、声がした。
「すっげぇ、なんの車? お父さん、何の車!?」
子供の声に、男声が響く。
「これは、ポルシェだろうな」
……フェラーリだよ。
そう思えど、得意満面のおじさまは間違いに気づいていないようだ。
「うわあ、お兄ちゃんの車、ポルシェなの!? ポルシェね僕、ミニカー持っているんだ!! 格好いいよね!!」
これは正した方がいいのかと悩んでいたあたしに、朱羽は片手の手のひらをあたしに見せるようにしてあたしを制して、腰を屈めて子供に笑顔で返した。
「格好いいよね。お兄ちゃんもポルシェ大好きだ」
……案外朱羽は、子供好きなのかもしれない。
こうして子供の頭を手を撫でて笑う姿に、きゅんとしてしまう自分がいる。
朱羽も自分の子供に、こうやって優しく接するのだろうか。
その子供の母親は……、違うひとなら嫌だ。
先週ホテルで子供を作る作らないの話をした時のことを思い出した。
あたしもやっぱり、朱羽とあたしの子供が生まれて欲しいと、強く思った。