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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
ひとしきり笑ってから、提案してみる。
「今度は待ち合わせ、またコンビニにしない?」
「なんで?」
朱羽がハンドルを切る。ちらりと見える喉仏に男を感じて、ドキドキしてしまう。
「そんな高級車が停まるところじゃないし」
ここに住んでいるあたしが恥ずかしくて、今度いいマンション探そうかしらと思えど、もしかするとしばらくただ働きになるかもしれない覚悟はしているため、今は引っ越せない。
「あなたが嫌なら国産車レンタルする。だったらあそこに停まってもいい?」
「いいってそんなことしなくても。なんであそこに停めたいの? 前コンビニに停めてくれたでしょ?」
「……あの時とは状況が違うだろう? 今は……俺があなたの恋人だって、ご近所さんに知らせたい。……見せつけたい」
「なっ……」
ストレートな言葉を吐く朱羽の眼鏡のレンズが、夜景と対向車線ですれ違う車のヘッドライトで、青白く光る。
「外堀も埋めたいんだよ。あなたの相手は俺だっていうこと、世間に知らしめたい。……ささやかな自己主張と、マーキングだ」
「……朱羽の相手があたしだとバレた時点で、嫌がらせされそう」
苦笑しながらも、朱羽の言葉が嬉しくてたまらない。
「ああ、そうか。あなたが嫌がらせをされたら、俺の家に転がり込むしかないよね」
「え?」
「それもいいね。嫌がらせをされている最中は、あなたを守るという名目で、壁の薄いあなたの部屋に俺がいればいいし。大変だね、声抑えるの」
「は!?」
「どっちにしても、同棲することになりそうだね。俺、この車好きじゃ無かったけれど、いい車だったなと心から思う」
「朱羽!!」
「あははははは」
「もう、冗談はやめてよ」
「冗談じゃなかったら?」
目だけは前方を見つめたまま、朱羽は持ち上げたあたしの左手を自分の頬に当て、そして手のひらに唇を押し当てる。
夜景に包まれた中、それは神聖な儀式のようで、指先まで朱羽への好きが溢れてじわじわと熱くなる。
朱羽はハンドルを握りながら、執拗にあたしの薬指を噛んだ。
「イタっ、イタイってば!!」
抵抗すると、歯形がついた指ごと手が離された。
「その傷跡を隠すために、お店に行かないとね。可愛いの沢山見なきゃ」