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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
***
「スピード出したおかげで、思ったより早く着いたね」
「左様ですか、それは結構なことでございましたね」
「また帰りも早く帰ろうか」
「安全運転でよろしくお願いします!」
車は調布ICを降りた。
調布市とは東京の多摩地域東部、東京世田谷区の隣に位置する場所で、調布飛行場を横切りながら小金井市に入る。
「えっと、ここは?」
「武蔵野の森公園。忍月に居た頃、この近くで仕事したことがあって、帰りにここの横を通って、星が綺麗だなって思ってたんだ……」
朱羽が綺麗だと思ったものを、あたしにも見せようとしてくれたことだけでも胸が一杯になる。
フロントガラスから見ているだけで、東京のネオンが公園の木々で遮られた空には、星が無数に散りばめられ、宝石のように輝いているのが見えて興奮してしまう。
だが朱羽は駐車場らしき看板を無視した。
「この時間、絶対カップルばかりが公園散歩したり、駐車場でいちゃいちゃしてるだろうから、あそこに停めて歩きたくない」
「でもここに来たのは、ここで星を見るためなんでしょう?」
「星空はこの公園の中に入らないと見れないということはない。ここの近くに、ちょっと高台になっている穴場があるんだ。まだ工事がされていなかったら、そこ絶景なんだ。……行こう」
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「うわああああ、綺麗……っ」
朱羽が向かったところは穴場中の穴場だろう。
あの公園より高い場所から、真上には星と見下ろす角度にすれば夜景が見える。
欠けた月の光と、天然の星光と人工の光が織りなすイルミネーションは、まるで光の海。空の星が流れて夜景を創り出したかのように見えた。
最初は車から降りたけれど、ちょっとうすら寒くて、朱羽が暖房を入れてくれて、温まった頃に天井が動き始めた。
朱羽が押したスイッチひとつで、トランクルームがあった場所が動いて、数十秒でオープンカーに早変わりしたのだ。
そんな文明の利器に驚愕しながらも、贅沢にも座ったままで見上げることが出来た、夜空の美しさにしばし惚ける。
朱羽に言われて、朱羽と共にシートを倒して夜空を見上げると、星幽(アストラル)空間に漂っているような錯覚に陥ったあたしは、手を伸ばせば星が掴めそうな気がした。