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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
 

 朱羽はあたしの手の甲に口づけた。

 あたしはそれだけで生じた甘い痺れに、声を上げるのを必死に堪える。


「やっと手に入れたのに、いまだ……あなたに恋し続けてる」


 そして反対の手であたしの後頭部を引き寄せ、彼も身を乗り出す。


「嬉しくて幸せなのに、それでもあなたを想うと、今でも切なくなる。あなたをひとつ知る度、また好きが増えて苦しくて、俺が壊れてしまいそうで」


 掠れた声を出す朱羽の唇が近づいてきた。

 朱羽の濡れた瞳が、星が落ちたようにきらりと光る。


「俺を助けて……」


 絞るような声に、あたしの心も共鳴して悲痛な声を上げた。


「陽菜……」


 熱い吐息があたしの唇の表面を震わせ、そして柔らかな唇が重なった。

「んぅぅっ、んんっ」

「ひ、なっ、俺の……んっ」

 もう何度したかわからない朱羽とのキスは、蕩けるように甘く。あたしは朱羽のキスに酔い痴れながら心も熱く溶けていく。

 ここは外で、誰が見ているかわからないというのに、それでも朱羽が愛おしくて朱羽の吐息を朱羽の匂いを、あたしの腕の中で感じたくてたまらなかった。

 キスがとまらず、離れても互いの瞳に吸い込まれるようにして、またやるせなさそうに吐息を漏らして唇を重ね合う。

 緩やかにかけられている暖房も手伝い、熱情に身体が熱くてたまらない。

 火照った身体を鎮めて欲しい――。

 こんなにふたりで荒い息を吐いて、こんなにひとつのリズムになりたいと身体を揺らして、こんなに切ない声を漏らしている。

 どうすれば、溢れる好きが止まるの?

 どうすれば、この急いた心を止められるの?

 あたしも朱羽をひとつ知る度に、好きになっていく。

 何度でもあたしは、朱羽に恋していく。

 恋してドキドキして、胸が切なくなって。

 それくらい、あたしも朱羽が好きなの。

「好、き……っ」

 キスの合間にあたしは叫ぶ。

「朱羽、好きでたまらないっ」

「……っ」

 朱羽の目がやるせなさそうに細められる。

 理性と葛藤しているような瞳は苦しそうだった。
 
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