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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
「ちょっと待ってよ、なんでそうなるの!?」
頭が変になりそう。
会社を辞めるということと同じように、突然朱羽の話で出現した忍月財閥の現当主。そして朱羽の見合い。
朱羽のように一を聞いて十を知れる頭ではないあたしには、まったく話が繋がらない。
因果関係がさっぱりわからない。
「現当主が決めた相手と見合い結婚し、忍月財閥を引き継ぐ。それが俺の代償だった」
"代償"――。
「なんで、朱羽が忍月財閥を引き継ぐの!?」
驚きに声が裏返る。
「聞いたことない? OSHIZUKIビルの噂」
気怠げに朱羽は笑う。
たとえさわりでも、始めから専務が言っていた。それに、向島専務との確執での忍月コーポレーションの副社長について、宮坂専務だけではなく朱羽も言っていたはずだ。忍月財閥の後継者問題のことを。
「忍月財閥の現当主は、次期当主を亡くした。いるのは、忍月コーポレーションの副社長、つまり甥のみ。現当主は、直系に継がせるために、亡き次期当主が作った妾の4人の子供達をOSHIZUKIビルに呼び寄せ各会社に入れて、後継者相続争いをさせた。それが二年前」
一、忍月の後継者は正妻の子供はおらず、妾腹の男子4人がいるらしい。
「俺は母方の姓、香月と名乗っているが、戸籍上の名前は忍月朱羽――」
一、木場のビルに同時期に入った大きな4つの会社には、母方の姓を名乗る後継者候補がそれぞれひとりずつ勤務しているらしい。
鳥肌がぶわりと立つ。
「そして渉さんは、俺の実の長兄で、実名は忍月渉だ」
鳥肌が立つ。
符合するのだ。
二年前、なぜ突然社長は、宮坂専務の依頼で、ムーンをOSHIZUKIビルに引っ越したのか。
そして宮坂専務が朱羽をシークレットムーンに手放した理由。
宮坂専務がやけに朱羽を可愛がっていた理由。
ああ、向島専務も言ってたじゃないか、朱羽は宮坂専務の"弟"だと。
……知っていたのか、向島専務は。宮坂専務から、忍月財閥のことを聞き、そして自分も財閥を背負う立場だからと、意気投合したのか。
「俺達は、あらかじめ入社の期間が決められていた。長兄の渉さんだけが例外で、ずっと忍月コーポレーションにいて、俺を含めた弟達を統括している」
本当にいるんだ、別の階の会社に朱羽の兄弟が。