この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
~Wataru Side~
「ふざけんな!!」
俺は切ったばかりのスマホを床にたたきつけた。
あのジジイは今、なにを言った?
――お前が言い出した後継者争いだ。お前は責任を取るといったな?
ジジイ自ら、ジジイがくたばる前に、後継者を確定すると言い出した。
約束したことを反故にして。
――お前が、忍月コーポレーションの社長職も嫌がっているのだから、朱羽に当主の座を継がせ社長につかせる。そうであれば、朱羽が今いる会社と他の奴らの会社を潰してビルから追い出せ。使えないのは必要ない。
つまり俺の弟であり朱羽の兄ふたりを、ジジイの孫ふたりが勤めている会社と、月代さんが作ったシークレットムーンを潰せと、言った。
それだけではない。
――朱羽の代理は、お前ひとりでいい。
俺は朱羽のスペアだと、そう言った上でこう続けた。
――来週の木曜日、朱羽と先方の令嬢を見合いをさせる。もしお前が朱羽の縁談を潰すつもりなら、お前が朱羽の代わりをしろ。お前が見合いをして、結婚し、お前が儂の後を継げ。
……冗談じゃねぇよ。
なんでこんな話になったんだ。
俺か朱羽か、なんでそんな話に。
朱羽は、ここまで頑張ってきたんだぞ?
昔昔のあの顔合わせの時、既にジジイは勝手に、初めて会った朱羽と他ふたりを、俺の弟にしていた。
あの時ジジイは、俺達に戸籍を突きだして言ったんだ。
――認知をしてやる。だからお前達は、この名誉に命を捧げよ。
俺を含めて、弟だという若い男達の前に置かれたそれは、既に親父の名前が入っていた。