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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
親父が元気な時に認知届を出していたのか、ジジイが勝手に届を出したのかよくわからねぇなりにも、ジジイは忍月財閥の一族に入れることが、彼らの誇りとなり、忠誠を誓うのは当然と思っているフシがあった。
だから偉そうに、紙に書かれた名前如きで、妾腹の子供達を手中に収めた気でいた。
その人生を恵まれたものに書き換えたと自負している、ただの偽善者だよ。
俺は愛人の子として本家で蔑まれて育ち、どんなに俺やお袋が、親父の妻に虐げられて惨めな思いをさせられてきたのか、本当は知っているくせに、親父もジジイも見て見ぬふりをしていたのを許す気はねぇよ。
もともと本家でメイドをしていたお袋は、エスカレートしたあのババアに躾と称して虐待され、挙げ句には俺の目の前で火だるまになって灰になった。
ジジイと親父が、あのババアになんて言ったと思う?
――遊ぶのもほどほどにしなさい。
殺されたんだぞ!?
人間が火あぶりにされたんだぞ!?
それから俺は、火を見ると身体が竦んでパニックに陥っていた。人間が焦げる匂いが鼻につき、焼き肉も食べれないほどに。
悔しかった。
なんでお袋がそんな目に遭って死なないといけないのか。
俺を生んだことは、そこまでいけないことだったのか。
それでも、あのババアと親父の間に子供がいない限り、あのババアは財閥の財産は手に入れられない。どんなに欲しがっても。
そう思い、俺は……俺にトラウマを植え付けたババアに制裁を加えるために、親父の子供としてババアに気に入られるように育った。
親父は知っていただろう。
俺が、あのババアの閨の相手をしていたことも。あの女が俺に惚れ、俺を次期当主にたてて、俺の妻になろうとしていたことも。……俺がそう仕向けて、復讐をしようとしていたことも。
だが、ジジイは俺とあの女の目論みを見抜いていた。
俺の牽制のために、弟達を認知させた。
あのジジイは思い違いしている。
俺が落ち着いたのは、弟達が出来たからではない。中でも朱羽を可愛がっていただけの理由で、俺が丸くなったわけではねぇんだ。
……沙紀だよ。
焼き肉好きの沙紀が、俺の火の恐怖症すら治してくれた。