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いじっぱりなシークレットムーン
第10章 Funky Moon
沙紀が俺の曇っていた目を、明瞭にしてくれた。
空は青く、太陽が輝き、夜には星と月が浮かぶ……普通はなんでもない当たり前のことを感じ取って、初めて俺は感動して泣いた。
沙紀との出会いがあったから、俺は朱羽に愛情を注げたんだよ。
かつて感情をなくした俺だったらからこそ、朱羽の境遇に涙を流すことが出来た。
俺が相手にしなくなったババアが、魔の手を俺の弟達に向けたのを、俺は感じた。
弟達はいい男だ。そりゃあ親父がいい男だし、親父が手を出した女はいい女だったろうさ。
その中で朱羽が中性的で一番儚げで。自分で育てようとあの女が目を光らせたのもわかっていた。
それもあって、俺は心臓で倒れた朱羽をアメリカに連れたんだ。
朱羽がカバを一心に想い続けていることを知った俺は、朱羽が立ち直ろうとしていることに喜んでいたのと同時に、日本に帰国して、朱羽がカバを追いかけたら、カバの身が危なくなることを恐れた。
カバの顔は見たこともなかったが、それでもあの女なら、朱羽の弱点を見つけ出して潰すことはやりかねない。
朱羽があの女や、あの女を野放しにして俺達を道具にしようとしているジジイに立ち向かえるようにするためには、そしてカバと引き合わせるためには、朱羽が俺と似た忍月の力を纏えばいい。
そう思い、朱羽に提案した。
――お前が惚れている女を手に入れるために、忍月の力を手に入れろ。
そうすればあの女も迂闊には手を出せなくなる。
――力を手に入れるためには、忍月を受け入れろ。今ひとときでも。
手が出せなくなるようなものを作ればいい。
――お前が、望んだ未来を実現するために、忍月を利用しろ!
朱羽は俺をじっと見て、こう言った。
――俺がそうすることで、渉さんは、望んだ未来を手に入れられる?
俺は頷いた。
――俺が望むのはふたつ。忍月とは関係ないお前の幸せと、俺の幸せだ。
――渉さんは、忍月を出たいの?
――ああ。自由になって、お前のように愛する女と、普通の恋人として生きてみたい。